ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の佰拾】ニッポンの弦楽器の音色を味わう時節到来

2023年12月

♪秋の夜長を鳴き通す ああ、おもしろい虫の声

 今年はこのような秋の趣を味わう余裕もなく一気に冬がやってきたようです。

 この「COLARE TIMES」12月号が発行される11月25日前後は、二十四節季という暦に照らすと「小雪」(雪が降り始める頃)、さらに七十二候という暦では「虹蔵不見」(陽の光も弱まり、虹を見かけなくなる頃)となります。春夏秋冬の各季節を六つに分けて、1年を二十四等分……それぞれに相応しい季節名が付けられているのが「二十四節季」。さらに三等分して1年を七十二等分したものが「七十二候」です。花が咲く、虫や鳥が鳴くなど、自然の変化を敏感に受け止めながら生活が営まれていた頃がありました。

 コラーレではお馴染みの公演が行われる時節となりました。12月9日㈯、コラーレのマルチホールにて「パフォーミングアーツのエントランス vol.7 胡弓&箏」が開催されます。今回は“ニッポンの擦る楽器と弾く楽器”をテーマに、胡弓奏者・木場大輔さんと箏奏者・ 日原暢子さんが、楽器の特徴をお伝えしつつ、各楽器の代表曲から富山民謡、そしてお馴染みの曲までを披露する……言わばレクチャー付き演奏会です。

 楽器は一般的に「管・弦・打楽器」と3種類に大別されますが、日本では「吹き物」「弾き物」「打ち物」と言われてきました。「弾き物」には、「抱えて弾く楽器」と床などに「伏せて弾く楽器」があります。「抱えて弾く楽器」は、さらに「弦を撥く楽器(撥弦楽器)」と「弦を擦る楽器(擦弦楽器)」に分けられます。抱えて弾く撥弦楽器として、琵琶、三味線などが挙げられますが、胡弓は日本特有の擦弦楽器になります。

 胡弓は、小さな三味線のような楽器に張られた糸(弦)を、馬の尻尾の毛を緩く張った弓で擦って演奏します。メロディを笛のように“伸びる音”で表現でき、雅楽の笙のような重音も出せる魔法の楽器です。ヴァイオリンのように弓の角度を変える代わりに楽器をぐるりと回転して弓に当たる弦を選ぶ奏法も注目点です。三弦胡弓と四弦胡弓がありますが、今回木場さんは両楽器共に奏でます。胡弓が江戸時代初期には存在していたことは屏風絵などから明らかなのですが、伝来に関する詳細ははっきりと分っていません。

 何と言っても、富山県を代表する民謡「おわら節」と「麦屋節」で胡弓が大活躍することはご存じの通りです。チューリップ、雷鳥、ブリ、ホタルイカ、白エビ……と並んで、胡弓は富山県を代表する楽器と言っても過言ではありません。胡弓がこれだけ身近な地域は全国的にも珍しいと思われます。「県花」としてチューリップが制定されているように、胡弓を“県を象徴する楽器”「県器」として制定なさることを私は提案します。

 一方「伏せて弾く楽器」を代表するのが箏。右手親指、人差し指、中指に爪を付けて弦を撥く「撥弦楽器」です。箏に関しては「COLARE TIMES」2021年5月号に「箏さまざま」と題して寄稿しましたが、今回は十三弦の伝統的な箏と、近年開発され若い演奏家を中心に拡がりつつある二十五弦箏、2種類の箏の音色を楽しむことができます。

 12月9日は、二十四節季では「大雪」(本格的に雪が降り出す頃)、七十二候では「閉塞成冬」(天と地が塞がり真冬になる頃)となるそうです。温暖化が進行する現在、幸か不幸か寒さや雪に妨げられることはなさそうです。ご来場いただき、ニッポンの弦楽器の音色を心ゆくまでお楽しみください。

パフォーミングアーツのエントランス
木場大輔(胡弓)& 日原暢子(箏)
2023年12月9日(土) 開場13:30 開演14:00
黒部市国際文化センター コラーレ(マルチホール)
  • コラーレ倶楽部 特典・入会案内
  • 子どもたちの夢の種 リトル・カルチャークラブ
  • 実行委員会 コラーレを支えるサポーター
  • COLARE TIMES コラーレの機関紙からピックアップ
  • コラーレ倶楽部 アクティブグループの部屋
  • コラーレの足あと 沿革と過去のイベント紹介
  • アクセスマップ
  • 黒部市国際文化センター施設の空き状況を確認
  • コラーレ応援団体
  • 黒部であそぼう! リンク集