ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の百十弐】二度目のベトナム

2025年3月

 3月4日の早朝に成田を発ち10日に帰国というスケジュールで、文化交流を目的とするベトナムでの公演に同行しました。この10年間、国内における伝統文化の次世代への普及や地域振興に注力していたことを思うと、久々に取り組んだ海外公演でした。

 国際交流基金が、日本とASEAN諸国の次世代交流および人材育成を目指すプロジェクト「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」の一環として主催し、ベトナム中部の都市・フエ市内の中学校・高校4校へのアウトリーチ公演、そして市民の皆さまを招いたメインコンサートがフエ音楽院ソンホン劇場で行われました。

 現在一線で活躍する気鋭の演奏家、吉澤 延隆 のぶたか 、金子 展寛 のぶひろ (箏)、大河内淳也(尺八)、 金刺由大 かなざしゆうた (和太鼓)の皆さんが、ベトナムの次世代を担う若い方々や市民の皆さまに向けて、「日本の伝統音楽とその現在」と題し、伝統楽器や音楽の説明と共に古典音楽から多くの方々に親しまれている音楽まで、日本とベトナムの文化をつなぐ架け橋となることを願いつつ熱い演奏を披露しました。

 楽曲毎に異なる素直な反応と、アンコールで演奏したベトナムの愛唱歌「ベオ・ザ・メイ・チョイ」では多くの方々が体を揺らしながら口ずさむ様子に接して、音楽を通した文化交流の意義の大きさを改めて実感した次第です。

 学校では公演後に日本語を学び日本文化にも関心を寄せる高校生たちとの交流、その高校生たちがソンホン劇場にも来てくれて終演後にアーティストたちと一緒に写真に収まるなど、忘れられない光景となりました。

 フエはベトナム最後の王朝の宮殿などが残る古都で、宮廷音楽であるニャーニャックも伝承されている地域です。期間中にはフエ文化芸術学校とフエ音楽院を訪問し伝統音楽に関する意見交換会が行われましたが、ベトナムでも伝統音楽の継承を志す若い世代の減少にどのように対処するかが課題とのことでした。背景は異なれども世界共有の課題なのかも知れません。

 昨年12月にはホーチミンで日本の支援(JICA)による地下鉄が開通し、現在は首都ハノイでも工事が進行中とのことです。都市部の交通事情や環境問題の改善に日本の技術、経済面からのサポートが実現しつつあること、また数多くのベトナムの方々が技能実習や留学を目的に来日している現状に対して、文化面における相互理解の重要性が深く求められていることも併せて認識させられます。

 今回のベトナム公演のために結集した4人の邦楽演奏家たちには〔AKATSUKI〕というユニット名を冠しました。夜明け前の早朝を意味する「暁」、また「赤月」と言い月が地平線近くにある時は印象的な赤色を帯びること、二つの意味が掛けられています。今回の訪問が、日本とベトナム両国の歴史に深く刻まれ、真の文化交流の夜明けとなることを願って止みません。

学校アウトリーチ/AKATSUKIによる演奏
箏の説明
日本語学ぶ生徒たちと終演後の記念撮影
フエ音楽院・ソンホン劇場の全景
ソンホン劇場、終演後のロビーでの交流
フエ文化芸術学校訪問時、伝統音楽専攻の学生の皆さんによる歓迎演奏
バイク大渋滞……フエ市内の様子
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