ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の壱拾八】三味線、ヨーロッパを行く。

2001年6月

 2001年も怒濤の如く過ぎ去ったゴールデンウィークでした。もっとも昨年の夏過ぎからずっと怒濤のような日々が続いているのですが……。

<平成邦楽レボルーションvol.3>。「身につけた伝統的な技術や表現を、ただ“再現”するだけではなく、現代と向き合い、いかにエンターテイメントとして“再生”するか」をテーマに、坂田美子/薩摩琵琶ユニット<ビカム>、みやざきみえこ・藤原道山による琴&尺八スーパーユニット<イーストカレント>、杵屋邦寿・松永鉄九郎による長唄三味線ライヴ<伝の会>、プロフェッショナル太鼓術<打究人Da.K.T.>、津軽三味線の上妻宏光・笛の一噌幸弘・和太鼓の茂戸藤浩司の新ユニットが、5月2日から6日までの連日、南青山マンダラというおしゃれなライヴハウスで自由闊達に火花を散らしました。ガラガラの都内を尻目に連日大勢のお客様がお運びくださり、とくに最終日は立ち見のパニック状態。何とも熱い5日間でした。もはや、伝統芸能とか古典芸能とか邦楽などというジャンル意識はドーデモいいのかも知れない、と感じました。彼らのライヴを観ていて思うことは、「伝統的でたいそうな和楽器を致して御座候」ということではなく、目の前にある楽器を通 して今を生きる自分を表現する、そしてお客様と共に楽しもうということなのです。

 「音楽に国境無し」とよく言われますが、当然そんな彼らが音楽によってつくり出す空間は人を選びません。2月28日から3月9日までヨーロッパに行って参りました。国際交流基金主催事業「三味線欧州公演」。オーストリアのウィーンから東欧のマケドニアのスコピエとプリレップ、クロアチアのザグレブ、そして北欧のデンマークのコペンハーゲンをまわってきました。今回は「伝の会」と上妻宏光のジョイント。細棹の長唄三味線と太棹の津軽三味線。三味線という異国の楽器に初めて触れる皆様には「比較」という切り口が面 白かろうと考えてコーディネートしました。同じ三味線とはいえ、実は構造から奏法まで異なる二種類の三味線。国内でも共演は難しい。しかし、コソボ自治州は目と鼻の先。民族、宗教、政治様々な要因が複雑に絡まって内戦が続いている国(マケドニア)の人たちに自分たちの音楽で何かを伝えようという思いは、楽器のジャンルなど軽く飛び越えたようです。and 彼らの“所構わぬ ”明るいキャラクター。真剣に平和を願い、純粋に音楽を楽しむ事を知っている国の人々と共につくり出す空間は本当に素晴らしいものでした。まさに言葉なしの文化・国際交流だと思いました。チマチマした小さな枠組みなどに囚われずにワールドワイドな視野を持つ、口で言うほど簡単なことではありませんが、その意味を実感した旅でした。
2002年は<打究人Da.K.T.>と上妻宏光でルーマニアに行ってきます。

(2001年06月 COLARE TIMES 掲載)

写真上)新良幸人さんに選んでもらい、伝の会、三線を購入!
写真下)那覇の公設市場にて、南の島のお魚とご対面!

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