ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の弐拾壱】島酒・島唄……そして「沖縄発 三弦三昧!」Part2

2002年3月

 とうとう三線を買ってしまいました。暇を見つけては「チンダミ」(調弦)して、「工工四」(三線の譜面 )とにらめっこ。そして『高等学校 琉球・沖縄史』(歴史の教科書)を読んでいます。行けば行くほどハマるディープな沖縄。昨年12月7日に、沖縄市民小劇場<あしびなー>でおこなった「沖縄発 三弦三昧」レポートPart2です。中国の三弦→沖縄の三線→日本の三味線、かくもストレートに文化的系譜を感じさせてくれる三種類の楽器が中間点の沖縄で集い、熱いコラボレーションを展開する! 実は今までにありそうでなかった企画……ただ並べるだけの”博物館”にはしたくありませんでした。その着地点として私たちに求められているのは「エンターテイメントであり、アートたり得ること」に他なりません。「単なる伝統の技術や表現の『再現』ではなく、イキイキとしたエンターテイメントとして、また刺激的なアートとして現代社会に『再生』すること」、これは私たちのキャッチフレーズ。でも現在、伝統芸能に携わる者の合言葉だと思っています。

 3種類共にスパイクリュート(太鼓のような胴に棹が貫通するように差し込んである楽器のことを<楽器学>上そう言う)の撥弦楽器として、“血が濃い”からこそ演奏者の皆さんにとってこの企画は無理難題であったはずです。しかもこのような試みに参加なさるのは当然初の体験。彼らの体の中にインプットされているのは、いわゆる共通 の「五線譜」ではありません。五本の指を駆使する、爪を使う、バチを使う……奏法も全く異なります。それぞれに完成された音楽的展開があります。本来ならば同じステージに立つ理由など存在しないのです。

 まず企画意図を明確に把握していただくことから始まりました。たび重なるコミュニケーション。そして昨年11月の初顔合わせで探り合いと擦り合わせを経て、12月7日の本番では出演者皆さんの底に流れる音楽的パッションをぶつけ合い、まさに“火花散る”ステージが展開されました。山積みする難題を乗り越えてまず“第一関門”を通 過することができたのは、共演者を含めて、彼らの卓越した技術とこの企画に向かい合う意識<真のコラボレーションから生まれる新しい音楽の創造>であったことは言うまでもありません。芸能には厳しい沖縄のお客様にもきっと伝わったはずです。

 ところで、今回の企画はアサヒビールの企業メセナの一環であるとともに、沖縄県3ヶ所の公共ホール「沖縄市民劇場あしびな-」「石垣市民会館」「パレット市民劇場(那覇市)」の全面 的な支援と協力をいただいて進行しています。唄う、奏でる、踊る……といった芸能が衣食住の延長上にあるといえる沖縄では、その発表の場として公共ホールが果 たしている役割はとても重要なのです。しかし、そこに止まることなくホール自体が積極的に文化を発信してゆくことこそ求められているのです。沖縄で沖縄の皆さんと一緒に創って日本に向けて逆発信する。文化の大都市一極集中にクサビを打ち込む意味でも、こんなベクトルが根付いてくれたらもっと素敵な展開だと思いませんか? 3月27日の石垣市、そして29日の那覇市での公演が楽しみです。

(2002年03月 COLARE TIMES 掲載)

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