ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い
コラーレ倶楽部
アクティブグループの部屋
COLARE TIMES
【其の弐拾九】「More1」って、オマジナイの呪文?
2004年1月
慌ただしい師走から、皆で仲睦まじく集い新年を寿ぐ月=睦月(むつき)を迎えます。私も走りましたが(一応大学のセンセイ)、入試を目前に控えた受験生やレポート提出が迫る大学生たちも忙しい日々を送っていることかと思います。先日、たくさんの荷物を抱えた知り合いの高校3年生が、僕の目の前で数冊の参考書を「落とし」ました。僕は、彼の近未来の幸福(もちろん大学合格)を思ん計って、思わず古典的なオマジナイを口にしました。「オーッ! 鶴亀、ツルカメ!」キョトンとする彼! 僕の気持ちは通じなかったわけです。言葉は口にするだけで事態を一変させる力を持っている……言霊(ことだま)信仰ってやつです。戦に明け暮れ、治安も悪く、医療技術も乏しい、人間50年と言われた時代においては長寿こそ大きな価値だったはずです。「鶴は千年、亀は万年」長生きすると言われる鶴や亀は、昔から目出度い事の象徴とされてきました。新玉(あらたま)の年を迎え、彼の合格を祈って口にしたつもりだったのですが……まぁ、こんなことは受験には出ないか!?
さて、いよいよ「More1」です! 茂戸藤浩司の「も」、上妻宏光の「あ」、一噌幸弘の「いち」。より“More”高い次元の新しい音楽を創るべくひとつ“1”に結集した邦楽界の最先端を駆ける三人。この妙なユニット名には、そんな意味が託されています。昨年3月の「プロフェッショナル太鼓術 打究人(だくと)スーパーライブ」以来、コラーレ再登場の茂戸藤浩司。追随を許さないハイスピード打法とリズムキープテクニック、オリジナル太鼓6点セットを駆使したパフォーマンス。今や津軽三味線のスーパースター上妻宏光。世界を視座に据え、ますます磨きがかかった表現力は国境を越えて人々の心をゲット。そしてノンブレス循環呼吸、天才笛奏者・一噌幸弘。能楽界での活躍は言うまでもなく、内外のトップアーティストからもその実力が高く評価されている即興演奏家。
それぞれの超絶技巧と豊かな音楽性がジャンルの壁を突破り、伝統に止(とど)まることなく、まったく新しい音楽を創造する。今、時代が求めている理想を現実のものとしている彼らの存在価値は実に大きいのです。1月15日、コラーレで邦楽器の限界を超えた、まさに火花散る驚愕のセッションが展開されます。彼らのステージに言葉は不要です。古典空間からコラーレと黒部の皆さんの新年を祝って贈るお年玉第1弾。「古典空間への誘い」共々本年も宜しく御願い致します。
まずは賑々しく御来場の程、偏(ひとえ)に希(こいねが)い奉りまする!
(2004年01月 COLARE TIMES 掲載)