ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い
コラーレ倶楽部
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COLARE TIMES
【其の五拾】光陰矢の如し……2007年を振り返る
2008年1月
「光陰矢の如し 一寸の光陰 軽んずべからず」を実感、いや痛感する時候です。また、年々時の経つ早さに加速感を覚えるのは歳のせいでしょうか……あっという間に新しい年が巡って来ます。
平成20年……平成元年に古典空間をスタートして20周年を迎えます。帝国ホテルの富士の間あたりで盛大に周年パーティーを開催する予定は……ありません。日本の伝統の色が薄まりつつある中、次世代に向けて「少しでも日本の文化的アイデンティティーを体感する機会を提供することが使命」という想いが虚仮の一心で変らない以上、「伝統の再現ではなく現代のフィルターを通して“エンターテイメント&アート”としての再生!」という着地点に向けて実験と実践、そして東奔西走の日々はこれからも続くことでしょう。
2007年の下半期以降を振り返ると、コラーレでもお世話になったアーティストの活躍が目立ちました。7月に「ニッポンの伝統と現在ライヴ」でコラーレに登場した「URANUS(ウラナス)」の中井智弥と岩田卓也。中井は11月にフィンランドから招聘を受け、現地の琴であるカンテレとの共演を果たし、その足で国際交流基金主催事業による派遣で南米へ。メキシコ、チリ、ドミニカを巡演。二十五絃箏をかついでの世界武者修行を経て帰国。先日やはり成長著しい岩田と共に臨んだ「新・日本の音宣言」というコンサートではその修行の成果を遺憾なく発揮していました。
長唄三味線の「伝の会」。11月に紀尾井ホールで初の芸術祭に挑みました。奇しくも古典空間と同じ平成元年に結成した伝の会。杵屋邦寿、松永鉄九郎、小野木の三人四脚で走り続けて十数年、こけつまろびつの珍道中。その通過点の確認という位置づけでした。邦寿が弾く渾身の『黒塚』に鳴り止まない拍手。究極のアートがエンターテイメントに昇華した瞬間でした。同時に、長唄三味線究極のテクニック満載、3枚目のCDを発売。このCDはよい(!)です。
時期を前後して、同じ紀尾井ホールで一昨年に引き続き、二度目の芸術祭に参加した琉球舞踊の「志田真木」。新良幸人が地方に加わり、琉球古典音楽を本息で演奏。舞踊と音楽が主従の関係を逸脱して対等に向き合う新しい世界に、鮮烈な緊張感が場内を包み込みました。二人とも一昨年の「沖縄発 三弦三昧」でお世話になりました。津軽三味線の「あんみ通」も、もちろん元気に活躍中です。
そんな「伝の会」と「新良幸人 with サンデー」を連れて、12月19日から22日まで、マイナス20度、極寒のモンゴルに親善公演(国際交流基金主催事業)に旅立ちます。私たちは新年も“いつも通り”。着地点に向かって同志アーティストの皆さんと、地に足を着けた展開を目指して参りますので、御贔屓御引立ての程何卒よろしくお願い致します。
(2008年01月 COLARE TIMES 掲載)