ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い
コラーレ倶楽部
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COLARE TIMES
【其の伍拾弐】邦楽器の晴れ舞台!
2008年12月
街には早くもクリスマスのイルミネーション。ロマンチックな気分に浸ることはすでになく最近は、師走の喧騒に慌ただしく追い立てられる姿が目に浮かび凹む自分がいます。
激戦の末、西武ライオンズが4年ぶりに日本シリーズを制覇した今年のプロ野球。観るもよし、嗜(たしな)むもよし、ハマって没頭するもよし。時節なのでしょうか、スポーツの世界の隆盛を感じ、正直「嫉妬」を感じる自分がいます。
実は関心が薄かった野球の世界なのですが、今年は日本のプロ野球や大リーグの結果が妙に気になる年でした。
思えば3月26日、私は東京ドームのピッチャーズマウンドに立っていました。しかも、MLB(メジャーリーグベースボール)開幕戦「レッドソックス vs アスレチックス」第2戦! ベンチには松坂や岡島の姿も見えます。夢ではなく現実です。サウンドチェックやリハーサルに集中できない(?)自分がいたことを白状します。
今、注目を集めているプロ和太鼓奏者、共に20代、金刺敬大(けいた)、凌大(りょうた)、由大(ゆうた)、爽やかなルックスの三兄弟が結成した和太鼓ユニット『は・や・と』。圧倒的な技術力で展開するオリジナリティ豊かなステージ。ライヴ、コンサート、学校公演、海外ツアー等、活躍の場を広げています。
開幕戦のオープニングアトラクションの演出を担当するイベントプロデューサーからの出演依頼、度重なる打合せを経て、いざ本番当日。三尺五寸の大太鼓(宮太鼓または長胴太鼓)を中心に桶胴太鼓、締太鼓等、さまざまな太鼓をセットした特設ステージ。居合道を修めたことで打法に開眼したという前ソフトバンク監督の王貞治氏に因んで、グランドに登場した100名近い剣士の皆さんとのコラボレーション。クライマックスは選手紹介。5万5千観衆の眼前、『は・や・と』が強く激しく打ち鳴らす太鼓の中、「マツザァカ~!」「オカジィマ~!」のコールにグランドに駆け寄る選手たち。オーロラビジョンにも演奏シーンがアップで写し出される。右翼フェンスの隙間から覗いたまさに“絵巻物”でした。
試合も終了し、撤収も完了。ドームの天井とガランとした空席を見つめつつ想いました。通勤電車で咲くスポーツ新聞大見出しや居酒屋でのTV中継……日常生活の中に“当たり前に”存在する国民的スポーツ・野球。対して、新聞の見出しや飲みながらの話題になることを、遠いけれど確実に向かうべき着地点と考えたい日本の伝統・古典芸能の世界。同時に、これだけ多くの皆様と邦楽器との御縁をつくることができた喜び。嫉妬と充実、両感情が交錯する自分がいました。
東京ドームのド真ん中……リハーサル前の打合せ
(2008年12月 COLARE TIMES 掲載)