ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い
コラーレ倶楽部
アクティブグループの部屋
COLARE TIMES
【其の四拾】あんみ通、コラーレに見参!
2006年3月
空寒み 花にまがへて 散る雪に すこし春ある 心地こそすれ
空が寒いので、降る雪を桜の花が散るのと見間違うようで、まだ冬ではありますが、少し春めいた気持ちがします。
和歌の名人・藤原公任(ふじわらのきんとう)が送った下の句に清少納言が上の句を付けるシーンが『枕草子』(「二月つごもり頃に」)にあります。まるで桜が散るように降る雪の様子を三味線で表現した「雪花三味舞(せっかしゃみまう)」という津軽三味線ユニット<あんみ通>のオリジナル曲を思い出します。優しく降る雪や吹きつける雪、そんな光景が目に浮かぶ楽曲です。1000年の昔、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)など雅楽の音色に馴れ親しんでいた清少納言が聴いたらどんな想いを抱くことでしょう。
津軽三味線、これだけ注目を集めた楽器が近年あったでしょうか。多くの演奏家が日本各地で活躍中です。個性と実力がキーワードの津軽三味線の中にあって、彼女たちはひときわ光る存在なのです。1999年に結成以来、津軽三味線の古典的な楽曲や民謡を大切にしながらも、今という時代を生きる自分たちのフィルターを通して楽しくもユニークなオリジナル曲をたくさんつくってきました。彼女たちの姿勢は単純明快、「人々が気軽に口ずさめる音楽をつくること」。数回聴くと確かに耳について離れません。芸術的、専門的評価はさておき、まずは自分たちがつくり出す音楽の世界が、子供たちからお年寄まで世代や国境を越えて一人でも多くの人たちの明日の元気の糧になっていただければ、と<あんみ通>の二人は純粋に本気で考えているのです。
<あんみ通>は人々との「出会い」をとても大切にしてきました。この出会いが更なる出会いを生み、北は北海道から南は沖縄に至るまで、全国各地に実に多くの“応援団”が存在します。さまざまな土地を旅し、さまざまな人たちとの出会いを通して多くの楽曲が生まれました。タイを旅した時、出会った子供たちの瞳が忘れられず「クルンテープ~天使の都~」を作りました。彼女たちの底を流れるヒューマニティーも<あんみ通>の展開を支えているのです。そこには「じょんから節」の曲弾きの優劣を競う姿はすでにありません。あんみ通は言います、「私たち、いつの日か、“津軽三味線”ではなくて“三味線”の<あんみ通>って言われるようになれたらいいね!」いわゆるジャンルの呪縛から自らを解き放し、今を生きる人たちが真に求めている音楽を、自らの体験を通して紡ぎ出して行こうとする二人にあらためてエールを贈りたいのです。そして富山の皆さんとも今回の訪問を通して素敵なご縁が生まれることを期待しています。
クラシックのエントランス
あんみ通(津軽三味線ユニット)
2006年3月19日(日) 開演14:00 コラーレ(マルチホール)
(2006年03月 COLARE TIMES 掲載)