ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.69 「山海塾」2024年秋 シンガポール

2024年12月

 シンガポールでの最初の公演は1990年、カラン・シアター(Kallang Theatre)での『UNETSU』です。その後はエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ(Esplanade – Theatres on the Bay)で2012年『TOBARI』、2014年『KAGEMI』、2016年『MEGURI』を上演しています。今回はエスプラネードの中に新しくできたキャパシティー600席ほどの中劇場シングテル・ウォーターフロント・シアター(Singtel Waterfront Theatre)で『TOTEM』を上演します。
 劇場のプロセニアムの高さは6mと少し低く、袖幕のバトン高も6mです。照明のフォーカスに少し問題があるのですが、実験的なパフォーマンスに対応できるように客席の形状を変更でき、ステージの位置も変えられるようです。富山倉庫からの荷出しにスウェーデンの舞台装置の戻りが間に合わないので、道具箱や化粧道具は新たに揃え、砂を撒いたり回収したりする道具もすべてスウェーデンの船荷に入れたので、私の作業場にある物を見繕いました。9月10日に20フィートコンテナに詰めて送ったのですが、その船がシンガポールで停まらずクアラルンプールで通関手続きがあり、その後トラックに積み替えて陸路シンガポールに入るという連絡が9月28日にあり、舞台美術の破損に備えて修繕道具を手持ちで行くことにしました。

 9月30日、羽田空港近くのホテルに宿泊。10月1日朝、香港から戻ってきた市原と空港で合流し、総勢13人で出発。シンガポールの空港で、前回と同じ案内役のメイさんが出迎えてくれました。

 10月2日、ホテルから迷路のような地下道を通って劇場へ、仕込開始。午前10時、舞台装置を載せたトラックが到着。案の定かなりの物品が破損していて、舞台中央に立てる4本の柱の紗幕も破れています。幅30cm、長さ4m50cmの幕2枚を張り替え、穴が空いた2枚は障子戸のように継ぎはぎを張り込みました。私ひとり昼休みを取らずに作業を続け、午後の照明フォーカス作業に間に合わせました。今回は仕込日が2日間あるので、時間的には問題ありません。継ぎはぎが観客にバレなければOKです。『TOTEM』は一辺8m50cmの四角い舞台が30cmの溝で一辺4m25cmの4つの四角い舞台に分かれ、その上を白砂が覆っている構造です。照明フォーカス作業用に砂の代わりに4m25cmに縫い合わせた白布を4枚使うのですが、荷出しに間に合わなかった1枚は手持ちで来ました。

 10月4日午後から、照明、舞台美術確認のリハーサル。私は演出助手として客席から全部の流れを確認するため、私の出演シーンは他のダンサーに立ってもらいます。『TOTEM』は天児牛大最後の作品で、北九州芸術劇場と世田谷パブリックシアターでは天児が客席から確認作業を行いました。今回が海外での初めての公演で、私が演出の責任者となり、広報の取材も複数受けています。今まで担当してきた仕事に新たな仕事が加わった状態で、時間はかなり取られます。何よりも精神的負担が大きく、想定外のことが起きると自分が大丈夫かなと心配になります。主催者の依頼に応じて本番2時間前にフォトコール、衣裳を着けたまま開演を待ちました。白塗りをしているので楽屋の床に座り込んでじっと待ちます。午後7時半開演、ほぼ満席で観客の反応はとても良く、いろいろな不安も無くなりました。

 10月5日午前11時から、リハーサルスタジオでワークショップ。定員30人の予定でしたが申込者が多く、私のアシスタントをひとり増やして40人にしました。ワークショップ後、ブラックルームという部屋に場所を変えてトークイベント。私のほかに6人のダンサーで対応、午後3時終了。午後7時半から公演、終了後、劇場ホワイエでアーティストレセプションパーティー。
 今回の公演はエスプラネードが企画した「da:ns focus – Connect Asia Now」というフェスティバルの一環で、山海塾以外にも同時に幾つかの催しが行われています。そして世界中からプロデューサーが来ています。私も請われてスピーチを行いました。ニューヨークBAM(Brooklyn Academy of Music)のディレクター、エイミーと山海塾公演について話をすることが出来ました。日本からは国際交流基金が若いアーティストがいろいろな物を見るという企画を立てて大勢連れてきました。

 10月6日マチネ公演。3回公演で1,500人ほどの観客でした。終演後、撤去積み込み。日本で仕事のある制作の堀、音響の相川、照明の岩村はこの夜帰国。ホテルに戻り深夜まで開いているフードコートに行き屋台をハシゴしてようやくシンガポールの夜を楽しみました。

 10月7日、シンガポールでワークショップを行う石井を残し帰国。羽田から松岡はベトナムへ。
 私は東京駅近くのホテルで1泊、翌日帰宅し、夜は集落の獅子舞の稽古。シンガポールからおつまみに持ち帰ったナッツが好評で、皆で食べながら笛や太鼓の稽古をしました。シンガポールの1週間が真夏の夜の夢のようです。

シングテル・ウォーターフロント・シアター

2022年にオープンした、幅広い作品のために柔軟に活用できる中規模の劇場。シンガポール観光を代表するマリーナベイ沿いにある。

客席や天井に仕掛け

シングテル・ウォーターフロント・シアターは、客席やステージの位置が変更でき、フラット、円形など、6つの構成に組み替えることができる。さまざまなイベントに対応できるよう設計された。

ドリアン屋根の最上階にあるリハーサルスタジオ

多目的芸術センター「エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ」の最上階にあるリハーサルスタジオ。リハーサルやワークショップに利用される。窓からはマリーナベイが一望できる。

駅で掃除をするロボット

シンガポールでは、駅や空港で清掃ロボットを見かけるのは普通になった。清掃だけでなく、福祉、配達、警備など、さまざまな形でロボットが活用されている。

  • コラーレ倶楽部 特典・入会案内
  • 子どもたちの夢の種 リトル・カルチャークラブ
  • 実行委員会 コラーレを支えるサポーター
  • COLARE TIMES コラーレの機関紙からピックアップ
  • コラーレ倶楽部 アクティブグループの部屋
  • コラーレの足あと 沿革と過去のイベント紹介
  • アクセスマップ
  • 黒部市国際文化センター施設の空き状況を確認
  • コラーレ応援団体
  • 黒部であそぼう! リンク集