ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.49 シンガポール2016 「MEGURI」

2016年8月

アジアでの山海塾公演は非常に少ないのですが、その大きな理由は経済的に成り立たないことです。しかし2002年にシンガポールのエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイが出来て、この劇場での3回目の公演であり、そしてパリ市立劇場と共にこの作品の共同制作者でもあります。シンガポール川の河口に面してマーライオンや高層ビル群が建つ一画に有り、屋根が果物のドリアンの様な形の巨大な複合施設です。
蝉丸 徒然日記

5月17日、羽田空港からシンガポールに向かいました。空港に我々と同じような坊主頭の若い人達が10人ほどいて、お坊さんの研修会でも有るのかなと思っていたら同じ飛行機でシンガポールに入りました。良く晴れていて機内から海上に沢山の貨物船が浮かんでいるのが見えます。同じ作品を6月にパリで上演するので舞台装置を2セット作り、4月20・21日と1日違いで富山の倉庫からコンテナーを出したので、今頃このマラッカ海峡のどこかを通過しているのだろうと思いました。

シンガポールは日常生活のマナーに法律上の規制が多く、たばこの投げ捨てやつばを吐く行為を禁止していますが、ドリアンを電車内に持ち込んではいけない、チケットをぱちぱち指で弾いてはいけないという細かい規制もあります。今回入国の注意事項を読んでいたら、チューインガムを持ち込んではいけないというのが有りました。初めてシンガポールで公演したのは25年ほど前だと思いますが、その頃街中の屋台が決められたところに集められてフードコート化していく途中でしたが、ますます観光に力を入れているようです。

赤道直下ですがこの時期はそれほど暑くなく、日本との時差は1時間遅くなるだけなので肉体的に楽です。翌日劇場の楽屋口に向かって歩いていると昨日のお坊さん達が前を歩いていて。同じ楽屋口から建物に入っていきました。エスプラネードのスーパージャパンという日本芸術祭企画で、5月13日から22日の間に演劇、舞踊、音楽の上演やワークショップが行われ、お坊さん達はサントリーホール企画のHimikoという作品で声明を披露する人達でした。宣伝用小雑誌の表紙にはきゃりーぱみゅぱみゅと山海塾の写真が並んで載っていて、滅多に見られない取り合わせだと身内に受けていました。

5月20・21日山海塾「MEGURI」公演。前回まではかなりの集客数でしたが、今回は客席数1,900ほどの半分に満たないようでした。同じ時間帯でコンサートホールやスタジオで別の企画が行われていますし、1週間前から日本のものを上演し続けているので仕方がないかなと思いました。

公演終了後コンテナーに舞台装置を積み込みましたが、いつもと違って封印しません。この後ブラジルに向かうので、コンテナーごと燻蒸処理が行われ、その後封印出航となります。我々は一旦日本に帰国し、6月からヨーロッパツアー、そのまま7月にブラジルに行き「MEGURI」を上演します。その時までこの舞台装置とお別れです。ブラジル最初の公演地がリオデジャネイロですので、パナマ運河を通っていくのだろうと思います。熱でビニールテープ類がねばねばしなければ良いのですが。

5月22日やはり良く晴れていて、帰国の機内から海がよく見え、驚くほど綺麗な青や緑の環礁が幾つも見えました。そのうちの一つに滑走路が有り、これが南沙諸島の中国軍事進出問題なのかと寂しく感じました。

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2002年に完成したシンガポールの総合芸術文化施設「エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ」。ドリアンの様な屋根です。

 

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