ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.64 「山海塾」2022年秋 新作「KOSA – between two mirrors」メキシコ公演

2023年5月

 10月17日、南仏マルセイユの空港で制作のガエルと別れ、ピエールと合流。アムステルダム経由でメキシコシティに到着し、ホテルで1泊。翌日大型バスでグアナファトに移動しました。この街で開催される「セルバンティーノ国際芸術祭」50周年に招聘されたのです。初めて参加したのは1981年の『金柑少年』、そして1997年に『UNETSU』、2006年に『KAGEMI』を上演しています。当時『金柑少年』は『Graine de kumquat』というフランス名で行っていたと思います。グアナファトは銀の採掘で発展した起伏の多い町で、坑道として使われていた地下空間を今も道路として使っていて迷路のようです。かなり速いスピードで車が行き交い排気ガスもすごく、歩くには危険な感じがします。1981年当時、各地の地元写真家と野外撮影を頻繁に行っていてこの町ではミイラ博物館で撮影しました。ミイラと一緒に撮影したいと言うと、管理人が展示ブースのガラス戸を開けて赤ん坊のミイラを取り出し持たせてくれました。ミイラ自体はとても軽かったのですが、それを気軽に持たせてくれた衝撃は重かったです。今回はその様な余裕はなく、ホテルと劇場、レストランを、フェスティバル手配の車で丘や谷を越え、朝、昼、夜と移動しました。

 10月20日、劇場「Auditorio del Estado」の仕込みは難航しました。過去の公演時には感じなかったのですが、今回は地元クルーが時間にルーズで、しかも誰がその仕事の担当かよく判りません。仕込み初日、ランチタイムをサウンドチェックと指定しているのに、時間になっても照明チームが仕事を続けるので、山海塾スタッフも不安だと言うことで劇場に残ることにしました。私はダンサー、ピエール、現地制作アシスタントの女性二人とレストランに行きました。食事を終え劇場に戻ると、照明仕込みが続行していて、サウンドチェックは出来ないままでした。ところが午後3時になると照明チームは休みを取り午後6時まで帰ってきません。その間にサウンドチェックが出来ましたが、事前のタイムテーブルが成立しない状況です。ホテル、劇場、レストランをフェスの車で送迎されるのですが、時間ロスが大きく、疲れます。夕食後は照明スタッフと私が劇場に残り、高所作業用電動リフトのジニーには山海塾スタッフが乗り込んでフォーカスしました。劇場付きスタッフ、フェス派遣スタッフ、機材管理者がバラバラなので、館内の電気、楽屋の鍵、インターカムの手配など長時間待たされる状況です。

蝉丸 徒然日記

メキシコのグアナファトの劇場「Auditorio del Estado」エントランス

蝉丸 徒然日記

グアナファトの小径

 翌日21日の仕込み開始時、ランチタイムはサウンドチェックをしたいので、その時間は舞台上の仕事をしないよう、フェスの技術責任者に申し入れました。この日のランチタイムは照明スタッフも休むことが出来たのですが、サウンドチェックが始まると10人ほどの人が一斉に客席を掃除し始めました。音を立てて欲しくなかったのですが……。夕食までにオーバーヘッドのフォーカスが終わり、予定では音付き通し稽古でしたが、不安なので照明作業を続行することにしました。照明スタッフを劇場に残し、ホテル近くのレストランに行く途中、制作スタッフの女性二人は別の所で下車して我々だけでホテルに戻りました。私ひとり劇場に戻るのですが、ホテルのフェス関係者が車の世話をしてくれました。夜仕事を終え、現地スタッフは1台の車に乗り込み、照明スタッフと私二人が取り残された形になったのですが、現地スタッフのひとりが不審に思って10分ほど電話でやり取りしてくれて、結果その車に同乗し帰ることが出来ました。

 10月22日、『KOSA』本番初日。午前中、キュー打ち込み、サウンドチェック、午後ダンサーと場当たり。キャンセルと伝えられたプレスカンファレンス(記者会見)が午後5時に復活。ダンサースペーシングには付き合えず、舞台上のスタッフと客席明かりの消灯、点灯、大黒のアップダウンのリハーサルを終え、開場時間を迎えました。2日間の仕込みなのですが、ギリギリ間に合った感じです。客入れが始まると、想定していなかった2階席にどんどん人が入っていきます。2,000人ほど収容の客席が埋まりました。舞台はかなり広いので奥行きも十分取れたのですが、ホリゾント幕が水色で灯心が透けて見えます。綿のサラシを書き割り用に染めたような物で縦皺が目立ちます。袖幕は裾を処理しても幕そのものが歪んでいて一直線になりません。メンテナンスに予算が割けないのでしょう。
 10月23日も満席。すごく濃い4日間でした。劇場を出るとき、劇場付きスタッフもフェス派遣スタッフもすごく上機嫌で、求められて一緒に何枚も写真を撮りました。

 10月24日大型バスでメキシコシティに移動。会場は「Palacio das Bellas Artes」で、25・26日仕込み。過去2回この劇場で公演しているのですが、ここの仕込みも難航しました。新しい劇場情報がこちらに伝わっておらず、こちらからの情報も現場スタッフに伝わっていないことが問題なのですが、劇場のプライドの高さが邪魔しているように思います。劇場照明バトンに合わせて仕込み図を作成したのですが、照明バトンは常設のムービングとLEDライトが吊ってあり、一切バトンの上下も含めて動かすことが出来ません。美術バトンにケーブルを這わせ回路を組むところから始まり、機材リストに基づいてアレンジしてあったのですが、機材は全部レンタルでした。オリジナルライトプロットの機材ならばもっと楽にフォーカスできたのですが、時間が掛かりました。ここもランスルーの通し稽古はせず、照明の仕込みに当てました。観光コースになっているようで、時々人の群れが客席や舞台裏を通ります。昼食時間は緞帳を兼ねた防火シャッターが降ろされ、ガイドが付いた複数の集団が客席に座り、解説に聞き入っています。いろいろな問題がありましたが、舞台奥行きがあるので初めてオリジナルの仕込み図と同じ状態になり、ホリゾント幕は綺麗に染まりました。以前から舞台裏を仕切っている楽屋管理のカルメンは車椅子姿になっていましたが、勢いは健在でした。

 10月27・28日、『KOSA』公演。翌日は久しぶりに休日。
「死者の日」のパレードを見物しました。

蝉丸 徒然日記

メキシコシティの劇場「Palacio das Bellas Artes」ティファニー製ガラスの緞帳

蝉丸 徒然日記

メキシコの代表的なお祭り「死者の日」のパレード

 

  • コラーレ倶楽部 特典・入会案内
  • 子どもたちの夢の種 リトル・カルチャークラブ
  • 実行委員会 コラーレを支えるサポーター
  • COLARE TIMES コラーレの機関紙からピックアップ
  • コラーレ倶楽部 アクティブグループの部屋
  • コラーレの足あと 沿革と過去のイベント紹介
  • アクセスマップ
  • 黒部市国際文化センター施設の空き状況を確認
  • コラーレ応援団体
  • 黒部であそぼう! リンク集