ラレコ山への道:国際交流員「目からウロコ」
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COLARE TIMES
#25 ハロウィンの見えなくなったルーツ
2021年10月
仮面をかぶったり、怖い仮装やメイクをしたり、「トリック・オア・トリート(いたずらか、お菓子か)」と歩き回ったりするハロウィンの習慣は、現代のものに見えるかもしれませんが、そうではなく、昔から伝わってきたアイルランドやスコットランドの伝統に起源を発しているものです。それを知ってびっくりした私は、現代人に忘れられたハロウィンの起源を今月のコラムで紹介し、この驚きを皆さんにシェアしたいと思っています。
近代では、スコットランドやアイルランド、ウェールズを、イングランドと区別をする人が少ないかもしれません。確かに法律的には、スコットランド、北アイルランド、ウェールズは、イギリスという連合王国に入っていますが、その地域には「ケルト」という民族が3000年以上前から住み、それぞれの言語や豊かな文化を持っています。
日本と同じように、昔のケルト人の宗教は自然崇拝の多神教で、季節の移り変わりには祭礼がありました。4~6世紀、宣教師を通じてキリスト教がこれらの地域に伝えられ、どんどん普及していきました。一般的には 、キリスト教を異なる文化の土地に布教する時、この比較的に新しい宗教が土地の人に受け入れやすいよう、宣教師や監督はその土地で崇拝されている神様を「列聖」という過程によりキリスト教の聖人にしたり、既存のお祭りをキリスト教化したりする取り組みを行っていました。そのため、春の訪れを祝う「インボルク」、実りの秋を迎える「ルーナサ」、そして冬の始まりを告げる「サウィン」など、もともとあったケルトの祝祭は、キリスト教の影響によって変化してしまいました。ちなみに、こんな風にキリスト教の影響を受けた祝祭は他にも、元々冬至祭であったクリスマスや、春の訪れを迎えるためであったイースター(復活祭)があります。このようなプロセスを通じ、キリスト教はケルト人や他の民族の宗教を徐々に一掃しようとしました。
ハロウィンの由来に戻りますが、語源は「諸聖人の日(All Hallows’ Day)の前夜」ということで、「諸聖人の日はキリスト教の祝日なので、ハロウィンもキリスト教に関連する祝日だ」と言われています。しかし、ハロウィンの習慣とキリスト教の価値観を比較すると、食い違いが生じてきます。伝統的なキリスト教では、仮装するのが神聖をけがす行為として認められるし、悪霊を追い払うためにパンプキンを彫ったり飾ったりすることもキリスト教らしくないと言えるでしょう。
実はアメリカでは1980年代、悪魔崇拝者の儀式で子どもたちが虐待されたとする事件「Satanic Panic(悪魔的儀式虐待)」がありました。そして「ハロウィンに仮装する=サタン(悪魔)を崇拝する」と思い込んだ人が急増し、ハロウィンの活動を禁止した学校や教会も少なくありませんでした。そのため、ハロウィンパーティーの代わりに、キリスト教の神様を讃美する「ハレルヤ・パーティー」が開催され、トリック・オア・トリートをやめた家庭もありました。
一方、冬の始まりを告げるケルト人の祝祭「サウィン」に話を戻すと、現代のハロウィンに似ている共通点が多くあります。サウィンは11月1日に祝われますが、前夜祭の10月31日から行事が始まります。この日は、「人間の世界」と「妖精や神様の世界」を隔てている境目が最も浅くなる時点と言われます。つまり、10月31日に妖精が出没しやすいということです。しかし、この妖精はディズニーの元気なティンカー・ベルのようなものではなく、残酷で危険な妖精や悪霊です。
そのため、ケルトの人々は人間とわからないように妖精の仮装をし、自分を守ろうとしました。妖精のような姿で一軒一軒訪ね回り、食べ物と引き換えに詞や歌を暗唱しました。妖精が訪ねてきた家では、捧げ物をすると幸運に恵まれると思われていました。そうしなと、不幸が招かれるのです。
これらの他にも、ハロウィンとの共通点もいろいろありますが、時間が経つことで消えていった習慣もあります。4世紀から次の何百年に渡り、キリスト教宣教師の策略、11世紀のノルマン征服、イングランドによる再三の征討、そして母国語が使用禁止されるなどにより、ケルト人の盛んな文化が徐々に奪われていきました。
ハロウィンの人気が高まっている現代では、ハロウィンパーティーは楽しんでも、そのルーツを知らない人が少なくないと思います。スコットランド系アメリカ人の私も、ハロウィンはキリスト教の聖人に関係ない可能性があるとわかった時、驚きました。消滅の危機にあると認識されたケルト語派に対し、言語再活性化の活動がその国や地域で勢いを増しています。昔の伝統的なケルト祝祭も新しい支持者が増えることを迎えています。私はケルトだけではなく、このようないろいろ文化が繁栄できるように、毎日毎日新しいことを知ってシェアしていきたいと思います。
[最近、目からウロコが落ちたこと……]
最近、日本の書道に挑戦しています。
大学生時代、日本語の授業でエッセイや感想文をよく手で書いたり、漢字検定を受験したりしていました。しかし、卒業してから手書きの機会が減ってしまい、その一方、携帯やパソコンの使用がどんどん多くなってきました。その結果、簡単に言うと、リンジーの手書きの文字がすごーくぐちゃぐちゃになってしまいました。それに、読める漢字の数は増えているものの、逆に、書ける漢字の知識には「バイバイ」と別れています……。
そのために最近、書道のレッスンを始めました。私のスキルはまだ今イチですが、もっとネイティブみたいに書けるよう、がんばります!
(2021年10月 COLARE TIMES 掲載)